とりあえず無題

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なぜ妖怪ウォッチは第2のポケモンになれなかったのか。

今からおよそ5年前、あるひとつのコンテンツが日本中を席巻した。

 

「妖怪ウォッチ」の画像検索結果

 

 

 

 

 

 

そう、妖怪ウォッチである。

 

 

 

2013年にレベルファイブから3DS専用ゲームとして世に送り出されたこの作品は、翌年のアニメ放映開始より注目を集め始め、「妖怪メダル」などのグッズが売り出されるとブームに火が着いた。店に置いていた「妖怪メダル」が一瞬にして完売、などのニュースは覚えている人も多いだろう。

 

 

その後は公開された映画が大ヒット、2014年の流行語大賞にランクイン、そして2014年、2015年と2年連続紅白歌合戦*1に出場するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの流行で、「妖怪ウォッチ」というコンテンツは文字通り社会現象となっていた。

 

 

 

この頃ネット掲示板2chのアニメ版やまとめサイトのコメント欄では「ポケモンはオワコン」、「妖怪ウォッチポケモンを超えた」などの意見がよく見られた。

 

僕自身もだいたい同じような意見で、妹の見る妖怪ウォッチのアニメを隣で一緒にみながら「これからは妖怪ウォッチの時代なんだな......。」とぼんやり感じていた記憶がある。

 

 

しかし、あれから5年がたった今、僕やおそらくほとんどの日本人が思っていた未来予想図とはかけ離れた現実がある。

 

 

妖怪ウォッチの直営店「ヨロズマート」は全盛期は全国に約20店舗存在したが、2019年2月には最後の福岡本店が閉店。アプリで配信された「妖怪ウォッチワールド」も200万ダウンロードは達成したものの、売り上げは伸び悩み、セルラン上位で見かけることもほぼない。

 

 

 

逆に妖怪ウォッチに押され気味で「オワコン」とまで呼ばれたポケモンは、2016年に配信開始されたポケモンGOが8.5億DLされ世界中で空前の大ヒット、2019年冬にはシリーズ完全新作「ソード・こなやシールド」の発売予定、カードゲーム部門も好調というように、この2つのコンテンツは以前されていた予想とは対照的ともいえる状態だ。*2

 

 

なぜここまでの差が出たのか。

 

どうして妖怪ウォッチは第2のポケモンになることができなっかたのか。

 

いくつかの観点からその理由を探っていこうと思う。

 

 

妖怪ウォッチはネット時代の寵児

 

まず妖怪ウォッチポケモンという2つのコンテンツの相違点を考えてみると。どちらも様々な形で商品化された、ゲームから始まったなど共通点が多いが、ターゲットにした客層というところに差がみられる。当たり前のことだが、どちらもメインターゲットは小さい子供ではある。

 

だが、妖怪ウォッチはそれだけじゃなっかった。より上の世代向けの要素が存在した。その要素とは往年の作品のパロディ、オマージュや時事ネタといったものだ。

 

主人公ケータが孤独のグルメのゴローちゃんに扮し食レポ、ジバニャンがトラックに轢かれるシーンでは101回目のプロポーズのあの名シーン、スティージョブズの新製品発表のモノマネなどなど例を挙げだしたらきりがない。

毎話こんな感じでなにかしらのネタがぶっこまれた。

 

これはメインターゲットの幼稚園児、小学生以外にも上の兄弟、親世代にもおもしろさを提供し心を掴み、かつネットで話題になるための一石二鳥のアイデアだろう。*3実際この考えは成功した。ツイッターなどにより妖怪ウォッチのこの攻めた演出は話題となり拡散され*4、人気上昇に一役買った。

 

かくいう僕も純粋に話を楽しむ妹の横でパロや時事ネタを探し、見つけては内心ニヤニヤしていたものだ。このアイデアは確かにうまくいった。

 

ただ、ここに妖怪ウォッチが予想以上に早く衰退していった原因もあると思っている。

 

 誕生した時代の差

 

多くのネタを取り入れ、話題をさらい、人気を得ることに成功した妖怪ウォッチ

 

しかし、結局のところそれはツイッターで言うところの、「バズッた」だけに過ぎないと言い換えることもできる。

 

無論全てがそうだったと言うつもりは決してないが、インターネット時代の特徴を上手くらえ、利用した妖怪ウォッチというコンテンツは、その話題の波が収まれば自然と人気がある程度収束に向かうのも、必然だったのかもしれない。

 

かといって、僕は妖怪ウォッチが採用したこのアイデアが間違いだったとは全く思わない。

 

むしろ逆だ。今の時代においては最善手であったのだ。情報が氾濫しコンテンツが飽和するこの時代、みんな目新しいものを求めている。普通のことをやっても成功しない中で、妖怪ウォッチは子供向けアニメに大人向け、そしてネット向きのパロディ、時事要素を組み合わせ、新たな価値を生み出した。

 

だからこそ大衆は妖怪ウォッチを受け入れ、成功を収めた。

 

 

だが新たな価値を生み出すために失ったものも当然ある。

 

それはストーリーの厚みだ。パロディ、時事ネタはいわば他からの「借り物」である。「借り物」を多く利用すればそれだけストーリー自体が薄くなってしまうのはどうしても避けられない。

 

そこが約25年前、今よりもコンテンツが圧倒的に少ない時代に、当時としては画期的な「ポケットにモンスターを入れ、仲間として一緒に旅をする」という発想で新たな価値を生み出し、長いゲームとアニメの歴史で少しずつストーリーを積み重ねてきたポケモンとの差なのかなと思ったりする。

 

これはどちらが優れているというわけではない。ポケモンが今の時代に出てきたとして、成功したかどうかは分からないし、ゆっくりとストーリーを積み上げていく期間が与えられたかどうかと言えばもっと疑問符がつく。

 

今のように目新しいものを追い求める時代には、爆発的な、一過性のヒットは昔より遥かに容易になったが、逆説的に長く愛されるコンテンツとなる難易度はその分遥かに上昇しているのだ。

 

 

よってもし、この記事のタイトルの疑問に答えを出すとすれば、それは「時代」の影響が大きい、ということになる。

 

完了形ではなく未来形

 

 

だが、自分で付けた記事のタイトルではあるが、僕はここに間違った認識が存在すると思う。

 

なぜなら正確には、「なぜなれなかった」ではなく「まだなっていない」だからだ。

 

 

ポケモンがオワコンと言われても持ち直したのはなぜか?

 

それは先程も述べたが「積み重ね」の力である。

 

ポケモンの数だけ出会いと別れがある」という有名な言葉の通りアニメではサトシ達は旅の中でたくさんの出会いと別れを繰り返し、その旅の中で多くの感動的なストーリーを紡いできた。

 

「バイバイバタフリー」や「リザードンのたに!またあうひまで!!」などポケモン好きなら誰もが自分の好きな話があるだろう。*5

ゲームでも昔も今も多くの子供がポケモンに熱中し、大人になってもその興奮が忘れられず現役で遊んでいる人も大勢いる。

 

そんなポケモンの輪は日本にとどまらず海外にも広がっている。ポケモンGOが世界で流行したのはいい例だし、僕が小さい頃ドイツに行った時、ホームステイ先の子がポケモンが大好きで一緒にカードの交換をして仲良くなった思い出もある。

ポケモンはここでも人気なんだなぁ……と改めて実感したものだ。

 

これだけ多くの人に、世代を超えて、国境を越えて愛され続ける「ポケモン」というキラーコンテンツに、妖怪ウォッチが及ばないのは当然のことではある。

 

 

 

まだまだここからだ。

 

 

 

妖怪ウォッチだって5年という短くない時間続いた、十分大きなコンテンツである。

 

すぐに飽きて新しいものに飛びつく今の時代に、5年続くのはかなり凄いことだし、その分だけ妖怪ウォッチが愛されてきた証拠でもある。

少し勢いは落ちたとはいえモーマンタイ。*6ヨロズマートはまだオンラインショップがあるし、アニメも明日の4月5日には心機一転新たなシリーズが始まる。

 

少しくらいまだ薄くたっていい。そこでポケモンとは違う妖怪ウォッチの魅力を活かした新しい、意欲的な「積み重ね」をしていけばいい。

 

 

たくさんのコンテンツが生まれ、そして消えていく時代。

 

そんな中でも妖怪ウォッチは第2のポケモンになる潜在能力は十二分に秘めてると思うし、ポケモンは更にその歴史を積み重ね、まだ何物も到達したことのない未知の世界を切り開ける力を持っている、と僕はそう信じている。

 

 

頑張れ!妖怪ウォッチポケモン!どっちも応援してるぞ!

 

 

 

*1:2015年の紅白歌合戦といえば「ラブライブ」のμ‘sが出場した年でもある。賛否両論はあるが10年代の「オタク」文化の拡大を表す象徴的な出来事だと思う

*2:ただし、ソシャゲの攻勢などもありポケモンのレート対戦人数は減少、アニメ新シーズンが「サトシが子供っぽすぎる」など評判がイマイチなのもあり、ポケモンも超順調、というわけではない。

*3:おそ松さん、ポプテピなども似たアイデアを取り入れている。作品外から多くのネタを取り入れ、メタ的な面白さを提供して話題をさらい流行となるのが最近の1つのトレンドなのだろう。おそ松さんに関しては腐女子の心を掴んだというのが圧倒的に大きいが、どちらにせよ新たな傾向ではある。

*4:ツイッターに限らずネットにおいてはメタ的な、ある種捻た笑いは好まれやすい。少し前までならこのような表現は狭いネット世界でカルト的人気を誇るにとどまっただろうが、今日のとどまることのないネット世界の拡張により世間で広く好まれるものと化した。

*5:ちなみに僕はロケット団が長年連れ添ったアーボックマタドガスと別れる「ロケット団!みだれひっかきでサヨウナラ!」が一番好きだ。魅力的な悪役、ロケット団の存在もポケモン人気の理由ひとつだろう。

*6:広東語で問題ない、の意味。ナイナイ岡村主演の香港映画のタイトルでもある。